GLM 4.1AutoCal 2

Genelec2006GLMGenelec Loudspeaker ManagerSAMSmart Active Monitor15GLM4.1.0GLM 4.1AutoCal 2

そもそもGLMは、モニタリングをさらに理想的な環境にて行うことを可能としたソフトウェアで、下記3つの機能を主な特徴となっております。

  • Genelecのスピーカーが設置された部屋にて音響上の特性をキャリブレーションし、理想的な音響特性へ補正することができる
  • GLMに対応するGenelecのSAMシステムのスピーカーの設定を、簡単にかつ確実に行うことができる(例:サブウーファーとのクロスオーバー、位相調整など)
  • GLMのネットワークに接続された全てのSAMシステムの音量やミュート/ソロ、オン/オフ、または異なるスピーカー配置(ステレオ、2.1ch、イマーシブなど)へのグループ切り替えなどを全て行うことができる。

つまりGLMは、GenelecのSAMモニターと組み合わせることで、例え場所が変わったとしても適切なバランスでモニタリングを行うことを可能とし、どこで聴いても意図したとおりのバランスでの再現をする「一貫したミックス」の制作を行うことをサポートします。それに加え、その優れたスピーカー・マネジメント機能によって、モニタリングの作業効率を大きく上げる信頼性の高い環境を提供することを大きな特徴としております。

GLM 4.1とは? - 「AutoCal 2」を知る

GLM 4.1のAutoCal 2を使用した場合のキャリブレーション動作イメージ

この7月15日にローンチされた「GLM 4.1」では、特にそのキャリブレーションの精度、そして使い勝手を大きく左右するキャリブレーションの速度が大きく改善されました。その中枢にあるのが、前述の「AutoCal 2」となります。


AutoCal 2 - GLM 4.1の核となる、新しいキャリブレーション・アルゴリズム

「AutoCal」とは、GLMによるキャリブレーションの核を担うアルゴリズムのことです。この度の「AutoCal 2」は全てのコードを見直した64ビット・アーキテクチャを新たに採用し、演算の高効率化を実現した上で今回、皆様へご提供しております。

AutoCal 2では、多チャンネルのモニター/サブウーファーを含むモニター・システムのキャリブレーションに要する演算時間の飛躍的な高速化を実現しました。ステレオでのモニタリングはもちろん 、近年注目されているDolby Atmos等の制作に必要なモニター環境をセットアップを、ごく短時間で行うことを可能とします。この高速化は、例えばスピーカーの微調整でセッティングを動かした際でも、気軽にキャリブレーションを行うことができることを意味します。つまり、常により正確なモニタリング環境に追い込むことを可能としているのです。

また、使い勝手の面で一番の大きな違いは、キャリブレーションの際の演算をクラウドで実効するようになったという点です。

従来のAutoCal は、ローカル(ホストの内蔵CPU でキャリブレーションの際の演算を行う)とクラウド(サーバー上でキャリブレーション演算を行う)を選択することができましたが、AutoCal 2から完全にクラウドのみで動作する方式を採用しました。これは、常に最新のアルゴリズムを利用することができるという大きなメリットへと繋がっています*。

*註:インターネット接続のない環境にてGLMを使用する際は、「Local AutoCal」をお使いのパソコンにインストールすることでご利用いただけます。ただし、その場合は従来の「AutoCal 1」での動作となります。


さらに正確なモニタリング環境を実現するために、実装された新機能達

GLM 4.1とは? - 「AutoCal 2」を知る

GLMにて、GLM4.0のAutoCalを使用した場合の測定結果(左)と、GLM 4.1のAutoCal 2を使用した場合の補正結果(右)。青い線で記される「適用フィルター」のカーブを比べると、GLM 4.1で使用されるAutoCal 2では、100〜300Hzの範囲を中心周波数として「0」を上回るフィルターが適用されるようになったことが確認できる

今回のGLM 4.1のAutoCal 2では、サウンドに関わる部分でも新しい機能を搭載しています。特にEQフィルター・アルゴリズムの進歩は見逃すことのできないポイントです。

従来のGLMのAutoCalは、マイナス方向のみの補正でした。ご承知のようにモニターの設置環境は、音質に大きく影響します。壁や天井、床およびミキシングコンソール、テーブル、機材ラック、家具などは、反響の原因となります。これがしばしばモニタリングルーム内に影響を及ぼし、ベースレベルが極端に高くなったりと最終的なミックスの低域に影響を与えてしまうことがあります。こうした悪影響を極力排除するというのが、このマイナス方向のみとしていた理由です。

対してGLM 4.1のAutoCal 2では、従来のマイナス方向のみの補正に加えて、低域の100Hz~300Hzの範囲を中心周波数としてプラス方向へと補正する「ポジティブ・ゲイン」を搭載しています。これにより、客観的なフラットネスを向上させながら、主観的な低域の量感を損なうことなく、優れたバランスでより正確なモニタリング環境の構築を可能とします。

そしてもうひとつ、ポイント・ソース・モニターの「The Ones」シリーズをお使いの皆様にとって重要な機能となるのが、「The Ones における拡張された位相直線性」です。

GLM 4.1とは? - 「AutoCal 2」を知る

GLM 4.1よりシステム内にThe Onesのスピーカー(8331A、8341A、8351B、8361A)がある場合、グループ設定の画面に「拡張された位相直線性」というメニューが表示される

これは3ウェイ構成となるThe Ones モニター(8331A、8341A、8351B、8361A)をグループで使用している場合、約100Hzまでの帯域で平坦な位相特性を得ることができるというものです。基本的にはオンでご使用いただくことを推奨しており、これにより軸外特性の向上を実現します。また、例えばThe Ones モニターと2ウェイのSAM™モニターを組み合わせたモニタリングシステムの場合においても、音像を安定させることができるなどのメリットをもたらします。

左右対称キャリブレーションの改善も見逃せないポイントです。これは、従来は全帯域に対して左右共通で適用していたEQ フィルターを、よりルーム・アコースティックの影響を受けやすい低音域のみに個別EQを適用するというものです。これにより、正確な低音域の補正が得られるようになりました。

このように、GLM 4.1への バージョンアップは、さらなるキャリブレーション性能の改善や利便性を向上させています。次回はそれぞれの機能が実際のミックスのシチュエーションでどのように有効に働くのか、その詳細についてご紹介いたします。

ぜひ皆様も、新しいGLM 4.1をインストールして、その精度の向上とキャリブレーション時間の短縮化をご体感ください。