At Home | 森元浩二.「自分の中の揺るぎなきリファレンス」
テレビやラジオ、インターネット……メディアからは様々な音楽が流れ、私達の日々の生活を彩っていますが、森元氏はまさにそんな日本の音楽シーンの最先端に位置する作品を手掛けているエンジニアです。
これまで、浜崎あゆみの『No way to say』や三代目J SOUL BROTHERSの『Unfair World』と言った日本レコード大賞受賞作品をはじめ、数々の名作を世に送り出してきた森元氏は、Genelecとの出会いを次のように話します。
「Genelecを最初に聴いたのは、ビクタースタジオへ導入された1035というモデルでした。初めて聴いた印象は、ラージスピーカーらしからぬ繊細さとレンジの広さで、その音にびっくりした記憶があります。スモール・モニターに関しては、私が個人的に尊敬するエンジニアが使用していたS30が一番最初の出会いです。やはりここでもレンジの広さに驚いて、その後、私自身も1031を導入して使用するようになりました」
Genelecのユーザーになった経緯をこう振り返る森元氏ですが、普段のミックスワークの際は「なによりも歌を大事にしている」と話します。
「歌の歌詞、内容がちゃんと伝わること。そのために、歌の細部が全て聴き取れて、内容の全てが伝わるように処理を行っています。歌なので当然強弱はありますから、例え聴きにくいところを作ったとしても"重要なワード”を聴かせてその前後の繋がりを作り出すことで、リスナーが言葉や意味を補完できるようなサウンド作りを心がけています」
現在、森元氏が自宅プライベート・スタジオを含めて普段から愛用しているのは、The Onesシリーズの8341。持ち運びもできるコンパクトなサイズでありながら、同軸ユニットの上下に楕円形のウーファーを配置した3ウェイ構造を採用し、長時間でのリスニングでも聴き疲れのないニュートラルなサウンドを実現したスタジオ・モニターです。数あるGenelecのスタジオ・モニターのなかから、森元氏が8341を選んだ理由はどこにあったのでしょうか?
「当たり前ですけど、8341の音色が非常に気に入っています。レンジが非常にちょうど良くまとまっていて、自分が思っていた通りのサウンドだったんです。あと、8341のサイズ感。運びやすいことはもちろん、コンソールの上に置いても安定感などの面で不安にならない、絶妙なサイズ感だと思います。そしてやはり、GLM(Genelec Loudspeaker Manager)によるキャリブレーションは大きな魅力です。非常によくできていて、セッティングも簡単な上に効果も高い。GLMには、いつも楽をさせていただいています」
位相感も含め、キャリブレーション後の結果も自然で素晴らしいですね
自宅のスタジオだけではなく、8341をさまざまな場所に持ち込んでレコーディングを行っている森元氏ですが、そこには「しっかりとしたリファレンスを持つ」という森元氏のレコーディングに関するポリシーが大きく関係しています。だからこそ、なおさらGLMには非常に大きな魅力を感じているようです。
「その昔モニター・スピーカーは、コイルとコンデンサーによるネットワークで帯域分割していて、EQは当然付いていませんでした。私が使っていたGenelecの1031には、ディップスイッチで調整が行えるEQが装備されていて、設置環境に応じて調整することができましたが、ディップスイッチの組み合わせで特性を作り上げることのできるテクニックを持つ人は限られていました。GLMによるキャリブレーションは、こうした難しい調整を簡単に、誰でもできるようにしてくれたんです。スタジオが変わっても、パッとセッティングして、パッと測定して、5分もあればすぐにどこでも同じ特性を得ることができます。位相感も含め、キャリブレーション後の結果も自然で素晴らしいですね」
現在の音楽の聴かれ方の特徴を考えるにあたって、「リスナーの聴取環境の違い」を欠かすことはできません。ヘッドホンや車など、リスナーが音楽を聴くスタイルは多種多様ですが、「どのような環境で聴いても同じ印象に聴こえるように、複数のモニター・スピーカーとヘッドホンも併用して、全てで同じバランスで聴けるように作業をしています」と森元氏は話します。その一方で、自分自身の確かな“リファレンス”を持つことの重要性を森元氏は次のように話します。
「私自身、エンジニアとしてスタジオで育ってきました。スタジオ設立もたくさん経験させていただきましたが、現在はprime sound studio formというスタジオの音が全ての基準になっています。また、自宅のプライベート・スタジオも、prime sound studio formの音響設計をお願いしたSONAにきちんと設計していただいています。一般的な自宅でのプライベート・スタジオとはもはや違うかもしれませんが、この部屋が現在の私の基準となる環境になっています。大事なのは、”自分の中にしっかりとしたリファレンスを持つ”ということです。自分が一番音響特性を把握できている環境で、自分の好きな音楽をたくさん聴いて、その音像を自分の中に刷り込んで、他の環境で聴いた時にそれがどう聴こえるか。そして聴こえたものを、自分の中ですり合わせていくか。そうしたことが重要です。その際にリファレンスと他の環境の差はなるべく少ない方が良いのですが、Genelecのモニター・システムを使用することで、例え異なる部屋での再生であっても、自身の環境に近い特性を容易に得ることができるのは大きな魅力だと思っています」
森元浩二.
プロフィール エンジニア、ミキサー。1985年〜リットーミュジック Avic Studio。1987年〜サンセット・ミュージック。1991年〜Studio Sound DALI。1999年〜I to I Communications。2002年にAvex Music Creativeのスタジオ、prime sound studio formを設立。チーフエンジニアとして現在に至る。2003年 浜崎あゆみ「No way to say」。2015年 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「Unfair World」でレコード大賞を受賞。Every Little Thing、AAA、E-Gilrs、チャラン・ポ・ランタンなど年間120曲以上の曲をミックスしている。
prime sound studio form : form-studios.com
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