Licaxxx - クラブでの鳴り方も見える豊かな表現力
■音楽表現の選択肢としてDJをチョイス
―― 音楽との出会いを教えてください。
幼稚園から小六までピアノも習っていましたが、演奏技術を上げることよりもアンサンブルの方だったので、みんなで何かを演奏するのが楽しい感じでしたね。テレビやラジオからの情報レベルですが、色々見ていたのでピアノ以外の楽器も皆でやる方が面白そうだなと感じていました。
自主的に音楽に目覚めたのは、中学に入った時にバンドをやりたくなってギターを始めました。基本的にコピーとカバーで、そこから洋楽を聴く様になり、CDショップへ行って好きなバンドを見つけたり、ラジオを聴いて情報を得るようになってからが、私の音楽が本当に好きになるスタートだったのだと思います。
洋楽を聴き始めた頃からUKロックにハマって、そこからUKの音楽ばかり聴いていました。当時オアシスが流行っていたし、アークティック・モンキーズが1stをリリースして、ブロック・パーティが居た時代ですね。邦楽よりも洋楽の方がカッコ良いと思っていた時期なので、ネットではMySpaceでUKインディーを掘りまくる感じでしたし、ラジオではJ-WAVEをひたすら聴いていましたし、CDショップではタワレコ行って、HMV行って、新星堂行って、洋楽コーナーで視聴しまくって、買いまくって、聴きまくる日々でしたね(笑)。
―― DJを知ったきっかけは?
J-WAVEのジャイルス・ピーターソンの番組を聴いていて「新しい音楽を紹介するタイプのDJ」がいることを知りました。そして、UKロックのアーティストが夜はDJをやっているとか、サマソニでダンス・ステージがあってエレクトロニックと融合したバンドが出てきたりとかで、電子音的な音楽もさらに聴く様になり、「人前に出るタイプのDJ」もいることを知りました。その当時、iTunesで自分用にプレイリストを一生懸命作っていましたし、人前に出て音楽をする方法の中でDJという選択肢もあることに気がついて、DJって楽しそうだなと思いました。
大学に入る直前に、DJ機材に触れてみる感じでスタジオに入りました。CDJ-1000が設置されていて、DJをやっている友達に操作方法を教えてもらって始めた感じです。リズム感は養われていた方だとは思いますが、曲を途切らせずにかけることは誰でも1日ぐらいでできる。でもDJは曲を繋げるようになったあとが超長いじゃないですか。そこから一生完成しない何かが始まるので(笑)
■解体再構築する実験的要素が魅力のロングミックス
―― DJには様々なスタイルがありますが。
スタイル的には、短く次々に繋いでいくタイプやスクラッチなどには興味がなかったので、ロングミックスです。このスタイルは、解体/再構築だと思っているのですが、その場で決めて、一度も同じプレイができない。プレイリストでは絶対説明できない何かがそこに発生するというか、同じ曲の順番で聴いても何も意味がなくて、その場の空気や会場などの条件に左右されながら、自分の中で曲を崩して別の要素を加える。ある種の実験的な部分が一番面白いと思いっています。
当然場数も絶対に必要だと思いますし、今でもメチャクチャ良いプレイができた次の日が全然良くない場合もあります。その打率を上げるためにも鍛錬だと思うんですけど、最初の頃はPodcastのDJミックス配信をメチャメチャ聴いて、クラブにDJプレイを見に行ってメッチャ聴いて、非常に熱心な感じでした(笑)。今も常にいろんな人のミックスを聴いて、クラブに好きなDJを聞きに行ってっていうのは変わりません。
―― 選曲や演奏はどのように行っていますか?
基本は自分が気に入っている曲の中でどうにかするのが大前提ですけど、会場の中の1人を狙って全体を上げる時もありますし、時間/テンション/暑い/寒いなどの状況を見て、BPMを変えたりタメてみたりなどを無意識にやっている感じです。次アレだわ、あの感じだわ、このテンションキープだからアノ曲だわ、みたいな感じでその場でパッと降りてくる。後々考えると超考えてはいますが、特にテクノハウス・スタイルのDJは、アーティストと技術職とオーディエンスを見る感じというか、自分を出しているんだけど、周りの条件に左右されているというか..。そこが楽しいところですね。
最近は90分〜120分位はDJの時間が欲しいのですが、長時間滞在させるには瞬発力だけでなく、じっくりやっていくことも必要ですし、それがロングミックスの重要になるところですね。CDJを3台同時に使っていた時もあるし、それでも物足りなく感じた時にヴァイナルはスパイスになりました。現場で使ってみないと分からなかったことですけど、ヴァイナルを挟むことによってテンションが変えられるというか、聴かせ方が変わってきて、今のDJスタイルに合っていると思います。
DJとはバッサリ分けていますが、たまにライブセットもやったりします。TR-8を走らせて、PC側では制作した上ネタが並んでいてその場で作っていくとか、アンビエントに振り切ってその場でミックスしていったり。もしくは、ドローンやアンビエントだけのパターンもあります。
■質感を正しくジャッジできるのがGENELEC
―― デジタル・ツールに触れたきっかけは?
大学の時に電子音楽の授業があって、音にまつわるメディアアートとしてアンビエントとかドローンを作っていましたね。その中でプログラミングと音楽の授業もあって、Cycling '74 MaxでFMをプログラミングしたりAbleton Liveで音を作るなどデジタル・ツールも使う様になりました。ギターもしつつ、DJもやりつつ、コンピューターでトラックメイクもする様になり、DJの幅も広がり音楽ジャンルや追及していくポイントも細かくなって行った感じです。
最初はヘッドフォンで曲を作っていて、それを大学のスタジオや研究室にあるモニター・スピーカーでサウンド・チェックしていました。質感重視の曲を作っていたので、ローファイな質感もハイファイな質感もジャッジできるのが重要で、色々あるモニター・スピーカーの中で、音が小さくてもバランスが崩れず、質感も正しく表現できていたのがGENELECでした。何チャンネルも配置するアート展でもGENELECはよく見かけましたし、やっぱり家にも欲しいなと思いGENELEC 8010を導入しました。
―― 初めてのGenelec体験はいかがでしたか?
小さいのにメッチャ出るなという印象で、低音のパワーも凄いしクラブでの鳴り方も見える。音楽を聴く姿勢が大きく変わりましたね。それまではヘッドフォンだけで確認する感じだったんですけど、PCの前に座って長時間疲れずに制作できるようにもなったし、曲を掘っていっても聴こえ方が全然違うので、リスニング・スピーカーとして色んな曲を聞いても楽しいですね。
―― SAMシリーズの8320も導入されたそうですか8010と比べていかがでしたか?
GENELEC 8320はやっぱり定位がすごく分かりやすくて綺麗だし、音が小さくても分かりやすい。上にもしっかり抜けてる感じもしています。あと今回はGLMソフトウェアを使って自分でスイートスポットを丁寧に設定したのもあり、モニタースピーカーを初めて体験する友人などにも定位の立体感に驚かれます。
―― 特色のGREY BROWNカラーでオーダーされましたがその理由は?
今回はテレビにつなぐことを想定し、家具に馴染む色にしました。
―― 8320はリスニング環境に合わせてサウンドを最適化できるSAMシステムが搭載されていますが、使用されていかがですか。またミュージシャンやリスナーにとってキャリブレーションできるメリットは何でしょうか?
GENELEC SAMシステムは使い方もシンプルで、簡単にセットアップできるのはいい。自宅や店舗など全てがスタジオのように吸音されている環境ではないし、複数チャンネル使いたい場合は特に便利だと思う。実際、低音のたまりがなくなり抜けがよく感じるので作曲以外にも空間を演出するためのBGMのための設置や、テレビでの映画鑑賞のスピーカーにも最適だと思います。
―― 最後にGENELECの魅力を教えてください。
やっぱり小さくても崩れない定位、そして定位の美しさだと思います。だからこそなせる複数チャンネル使った演出も素晴らしいので、初めてのスピーカーでの音楽体験をする人にもおすすめです。今後インスタレーション展示や、店舗での設置など”音楽を聞く”だけが目的ではないシチュエーションにも活用したいです。
Licaxxx
プロフィール 東京を拠点に活動するDJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。2010年にDJをスタート。マシーンテクノ・ハウスを基調にしながら、ユースカルチャーの影響を感じさせるテンションを操り、大胆にフロアをまとめ上げる。
2016年にBoiler Room Tokyoに出演した際の動画は50万回以上再生されており、Fuji Rockなど多数の日本国内の大型音楽フェスや、CIRCOLOCO@DC10 などヨーロッパを代表するクラブイベントに出演。日本国内ではPeggy Gou、Randomer、Mall Grab、DJ HAUS、Anthony Naples、Max Greaf、Lapaluxらの来日をサポートし、共演している。さらに、NTS RadioやRince Franceなどのローカルなラジオにミックスを提供するなど幅広い活動を行っている。
さらにジャイルス・ピーターソンにインスパイアされたビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰。若い才能に焦点を当て、日本のローカルDJのレギュラー放送に加え、東京を訪れた世界中のローカルDJとの交流の場を目指している。
また、アンビエントを基本としたファッションショーの音楽などを多数制作しており、Chika Kisadaのミラノコレクションや、dressedundressdの東京コレクションに使用された。
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