DJ KAWASAKI(DJ/サウンド・プロデューサー/作曲家)
「GLMは僕の制作の基盤を作ってくれる」
―― 自宅ではどのような作業を中心に行っていますか?
DJ KAWASAKI デモ制作は一番時間がかかりますが、同じくミックスも大事で、最終的に楽曲を自分のイメージに限りなく100%に近いところまで近づけるには、やはり最終的なミックスまで自分自身でやるのが理想だと思うんです。本番の演奏は参加ミュージシャンと一緒にレコーディングしますが、楽曲の土台となるデモ制作からミックス、マスタリングまでの工程を現在はできる限り自分自身でやるようにしています。
―― Genelecを知ったきっかけを教えていただけますか?
DJ KAWASAKI ドラムンベース・シーンのレジェンダリーなプロデューサーで、友人でもあるMAKOTO君(ロンドン在住)。業界の先輩でありつつ、実は同い年で仲良しの彼がスタジオで使っていたスピーカーがGenelecでした。ある時期、彼の自宅スタジオで一緒に楽曲制作をしながらいろいろ教わっていた時期があって、自宅でデモを作って彼のスタジオで作業をすると、聴こえ方が全く違っていて、聴こえてない音が聴こえてる! と(笑)。そのときにGenelecの深みのあるリッチな音に魅了されたんです。
―― 8340の導入を決めた理由はなんだったのでしょうか?DJ KAWASAKI 導入以前は最終的にスタジオで仕上げていたので、あくまで自宅用レベルのモニターを使用していました。それまで僕が使っていたスピーカーはフラットな鳴りのものだったんですが、低音の輪郭を作るのがすごく大変で、作り込んだ後にThe Roomでリファレンスしてみると、低音が出過ぎていたりしていたこともありました……とにかくこれまでは低音の処理が一番の悩みでした。大きな転機となったのは、実は昨年のコロナ禍で、自宅での作業が進むにつれて、さらに上のレベルの音作りを追求するにはGenelecを導入すべきだと思いました。MAKOTO君が使っていた8040の音に慣れていたので、それと同じ量感を再生できるスピーカーが欲しいと考えていました。その過程で、セッティングした部屋の音響特性による悪影響を最小限に抑えることを可能とするGLM(Genelec Loudspeaker Manager)というものがあることを知ったんです。しかも、GLMに対応した8340のスピーカーの基本構造は、8040と違いはない。そこで、これだったら今まで感じていた自宅環境とMAKOTO君のスタジオとでのミックスバランスの違いみたいな問題も起きないのでは、と思って導入を決めたんです。
―― GLMを使用した際の音の印象はいかがでしたか?
DJ KAWASAKI 素の8340はスピーカーの持つポテンシャルが全面に出てくるので、ものすごくパワフル。最初はそれを楽しみたかったので、(GLMを使わず)そのまま制作したり、リスニングしたりしてたんです。ですが、自宅スタジオってプライベートなものが置いてあって……そういう状態は音が乱反射して、出音も左右対称じゃない。そこでGLMを試したら、“ステレオ感がしっかりあるけど真ん中にはちゃんと芯がある”というか……まったく出音が違ったのに驚きました。低音がスッキリしつつも、十分なボトムがある。MID LOWの辺りも気持ち良く聴こえて、全ての帯域が良いバランスで聴こえるんだと思います。音の定位感もより研ぎ澄まされた印象で……右から出るギター、左から出るピアノみたいな位置関係や音の輪郭がキチンと聴こえますね。
―― 8340とGLMの導入は制作にどのような影響がありましたか?
DJ KAWASAKI 僕は、満足な低音域と、音の広がりがありつつもぼやけないバランスを意識するようにしています。低音域がしっかりと出つつも、モワッとしたすごく低いところが音階や輪郭に影響を与えず良きバランスで聴こえていれば、歌や楽器の処理がすごくやりやすい。センターがしっかりと見えていれば、ステレオ感もより自分の意図する方向へ追い込んでいける。そういう意味でGLMは僕の制作の基盤を作ってくれているといってもいい。
GLMを使い始めてから、どこで聴いてもイメージに限りなく近い状態で鳴らせる音作りができている
DJ KAWASAKI 最終的には必ずThe Roomのフロアでチェックしますけど、GLMを使い始めてから、どこで聴いてもイメージに限りなく近い状態で鳴らせる音作りができていると思います。自分の曲は頭の中で完成形をイメージしているので、当たり前のことですが微妙なバランスは自分じゃないと分からない。最終的には自分自身で表現するのが理想だと思います。それには楽曲制作する上での環境作りは本当に重要ですね。GLMを導入してから自分自身でミックスまで担当した曲をフロアでかけたときに、より現場感のあるサウンドになったんじゃないか、と身近なDJからも嬉しい感想をもらいました。DJプレイでもクラブで鳴らしたいサウンドを思い通りに出せるようになったと感じています。ダンス・ミュージック以外の音楽を聴くときも8340+GLMを使用していますが、心地よく時間を忘れて聴いてしまうことがある。だからもうスピーカーは変えられない(笑)。むしろGLMがここからアップデートされてどうなるか楽しみだし、自分もこの環境に慣れて自分自身もアップデートしていきたいですね。
DJ KAWASAKI
プロフィール DJ/リミキサー/サウンド・プロデューサー/作曲家。2005年に、King Streetより12インチ・シングルで世界デビュー。これまでにリリースしたシングルが、iTunesダンス・チャートにて通算8曲連続でNo.1を獲得。2018年には、7’’Vinylでのリリースを中心とした自身のレーベル"KAWASAKI RECORDS"を発足。 2021年6月30日には11年振りのオリジナル・アルバム『One World』をリリース。本作にはFloating Pointsのeglo recordsからもリリースするSauce81、Ziggy FunkやNeil Pierce作品で知られるTaliwa、久々のコラボレーションとなる多和田えみ、更には、The Roomのスタッフで3月にデビューしたばかりのジャズ・ボーカリスト彩菜が参加するなど豪華な内容となっている。打ち込みなしの全曲生演奏で、BOOGIEやDISCOのエッセンスを大胆に導入し新境地を見事に切り開いた。The Room(渋谷)で社長(SOIL& “PIMP” SESSIONS)と共催の月例パーティー"MAGNETiC”を開催中。
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