Smart IPで実現したフル・デジタルのフォーリー・スタジオ - ソノロジックデザイン

昨今、大きな広がりを見せているイマーシブ・サウンド。VRにも対応した作品が日々リリースされる昨今において、ゲームのサウンド・デザインにも大きな変化が訪れています。牛島氏がフォーリー・スタジオを作ったのも、こうした背景が密接に関係しています。

「このスタジオを作った経緯は、7.1.4chだったりとか、イマーシブ・オーディオのサウンド制作が求められるようになったからです。コンセプトとしては、アナログ的な要素はすべて排除したかったということがあったので、基本的にはこのスタジオをAudio over IP、Danteにフル・デジタルで対応するスタジオとしました。私自身、ゲーム・サウンドの制作が主な業務となるのですが、やはりサウンド・ライブラリだけでは足りない音だったり、ちょっと加工したい音、特殊な音というのを録りたいというケースは非常に多いので、そのためにこのフォーリー・スタジオを作りました」

そもそも、牛島氏がフル・デジタルでシステムを構築したかったことには、「正確な再生」というキーワードがあります。

「アナログ環境と違い、0か1のデジタル環境は少しでも再生環境に問題が発生すると音が出ないという非常に分かりやすい環境が構築できます。つまり、音が出ている＝間違いない、と言うことで正確な再生を保証できていると信頼することができるんです。この余計な迷いを生まない安心感も、非常に大きなメリットと感じています。それと、アナログの不確定要素を限界まで排除することで、デジタルの音をそのまま聴ける環境を構築したかったというのも理由です」

こうした牛島氏の考えを具現化するために選ばれたのが、Smart IP 設備スピーカーの4430Aでした。設備用としてラインアップされているこのスピーカーを、スタジオでの使用にあえて採用した理由を次のように話します。

「Genelecのスピーカーは個人的にも長年にわたって使っているので、自分の中でもリファレンスとなっているということが採用したひとつの理由です。そのなかでもSmart IPを選んだ理由としては、Dante、つまりAudio over IPに対応していて、LAN（CAT）ケーブル1本で電源も音声信号も伝送できると言うことが一番大きな理由でした。Smart IPについては、まずアナログ的な要素がないのでノイズを心配することも無いですし、あとはEQやディレイの調整も専用で用意されるソフトウェアのSmart IP マネージャーで細かく調整できます。スタジオそのもののルーム・アコースティックは必要十分に設計いただいていますから、今回はフル・デジタルというコンセプトを重視したことと、LANケーブル一本の接続による取り回しの良さからSmart IPを選択したんです。将来的な拡張性を考えた際、特殊なスピーカー配置の案件もご相談頂くことがあるので、柔軟なセットアップができる環境を目指したのですが、その点、LANケーブル1本で接続できることは大きな魅力だったんです。実は導入する前は、出力の音圧レベルについてちょっと心配していました。ただ、スペックをよく調べると50Wの最大電圧容量にも対応できているということで、このスタジオでも79dBの出力ができています。ですので、このようなコンパクトなスタジオには十分な出力レベルが確保できていると思っています」

サウンド・デザインの業務を主としている私には非常に適した出音だと感じています

Smart IP 設備スピーカーがスタジオでの運用に採用されることは、現時点ではまだまだ珍しいケースです。しかし、この導入は牛島氏の期待通りの結果になったと振り返ります。長年Genelecを愛用してきた牛島氏ですが、Smart IP 設備スピーカーのサウンドについても満足しているようです。

「Smart IPの基本的な音色は、Genelecの他のモデルと何ら変わりはないですね。アナログ的な要素が皆無なシステムなので、個人的にはよりはっきりとした正確性を感じています。私自身は波形が持つ本来の音をそのまま聴けている感覚があり、サウンド・デザインの業務を主としている私には非常に適した出音だと感じています。このキャラクターは、LANケーブルのみで接続が完結するSmart IPに期待した通りのキャラクターで、費用対効果の面も含め非常に満足しています」

11 x 4430A Smart IP設備スピーカー

1 x 7360A スタジオ・サブウーファー