「ボカロ文化をもっと多くの人へ」- DECO*27の想いを支えるGenelec
いまなお進化を続けるボカロPとして、シーンのトップを走るDECO*27。その原点は、パソコン備え付けのスピーカーで初めて初音ミクの声を聴いた時に遡ります。「なんとかして、この娘を使って曲を作りたいな」と強く感じたというこの時から、そのキャリアがスタートしました。
「初めて聴いた時に、声がとても良くて。しかも、最初はソフトだって気づかなかったんですよ。“すごくかわいい声のボーカルの娘がいるんだな”みたいな。それで色々と調べて行ったら、この声はソフトで作られたものだってことに行き着いて、PCとスピーカー、ヘッドホンとか必要最小限の機材を揃えて、曲作りを始めたんです。初めて作った曲は、1作目としてニコ動(ニコニコ動画)で発表しました。僕が初音ミクを知ったのがニコ動だったので、自分もそこで発表するっていうのは自然だったんです。今(2023年)から15年前の話ですね」
もともとは家にあった父親のギターから楽器を始めたDECO*27は、初音ミクを知る以前からMTRを駆使して、ひとりで楽曲を作ることに没頭していたそうです。その過程で出会った初音ミク、そしてボーカロイドは、自身の制作スタイルとのマッチングにも大きな可能性を感じたと話します。
「友達とと一緒にジャムったりとか、人と一緒に作ることが合わなかったんです。なぜなら、僕が全部思い通りにしたいから。ミクで作り始めたら“全部自分の思い通りだ”って。これだったら、“自分が表現したいことを、自分で歌わなくても表現できるな”という風に思ったんです。もちろん、(ミクで曲を)作り始める前も、“ミクで曲を作りたいなぁ、ボカロPになりたいなぁ”って思っていましたけど、実際に始めてみると、それまで制作に抱えていた不満みたいなものが全部なくなったんですよ。僕の制作スタイルとも相性が良かったなって思います」
より自分の理想に近づけることができるという意味でも、8341とW371は最高です
楽曲の制作において自身の意図や想いを重視するDECO*27にとって、モニタリング環境は極めて重要だと話します。そんな彼のプライベート・スタジオでは、Genelecの8341とW371が日々のクリエイティブな作業のパートナーとして導入されています。Genelecを選んだきっかけとなったのは、彼の提供楽曲のトラックダウンを数多く担当するエンジニア、岸本浩幸氏の存在。“キッシー”と呼ぶほど深い信頼関係にある岸本氏のスタジオで導入されていたのが、8341とW371によるシステムでした。その音を聴いた時、「これだな、と思った」と当時のことを振り返ります。
「“モニタリング環境に求めていること”と聞かれると、抽象的な表現になっちゃうんですけど、自分の頭で鳴っている音が目の前に出てくるか、ということなんです。それがより近ければ近いほど、制作している時のテンションが上がりますし、作品の仕上がりにも影響すると思っています。より自分の理想に近づけることができるという意味でも、8341とW371は最高です」
クリエイティブな作業について語る際、テンションをキープすることの大切さを繰り返し話す姿が印象的なDECO*27ですが、冷静な判断を行うために、決して音量でテンションを上げるようなことはしないとも話します。「(8341とW371は)どこまで音量を下げてもバランスが変わらない」と、その特性についても高く評価しています。
また、スピーカーを設置空間に対して最適化させることのできるスピーカー・マネージメント・ソフトウェアのGLM(Genelec Loudspeaker Manager)も、同氏のプライベート・スタジオでは大きな役割を果たしています。
測定してから返ってくるまでがとにかく速い
「GLMに関しては、何か大きなものを動かしたりとか、セッティングで変更があった時に使用しています。測定して思ったのは、測定してから返ってくるまでがとにかく速いということです。セッティングという工程については、もちろん良い音を目指してスピーカーをああでもない、こうでもないってやってはいるんですけど、僕自身はそこにあまり楽しさは覚えないのです。でもそれがパッと終わって、その結果がすぐに聴けるというのは、大変ありがたいですね。実際、GLMをかけないで音を聴いても“すごく見えやすいな”って思っているんですけど、入れるとやっぱりより良くなります。僕の場合は、歌ものをやっている以上はボーカルが主役なので、そこに注目して聴いちゃうんですけど、キャリブレーションした後は“歌が聴きやすくなったなぁ”とまず一番最初に感じます。それとスピーカーから出てくる音が信頼できるので、より制作に集中できるようになったな、と感じています」
DECO*27が手掛ける楽曲は、スマートフォンからPC、さらには大規模なイベント会場にいたるまで、実に多くのシチュエーションで再生されています。そのため、様々なデバイスでの音の確認を行っているそうですが、Genelecでモニタリングすることでいずれの環境でも「頭の中で鳴っていたバランスの音で表現される」と話します。
初音ミクの魅力を伝えたい、ボカロの文化を発展させたい。誰よりも強く願うDECO*27は、多くのクリエイターの目標となる存在ですが、そんな次世代のクリエイター達へ向けて次のようなメッセージを話してくれました。
「僕はミクに刺激をもらって、今こうやって制作をしてたくさんの人に聴いてもらえる状態にあるんですけど、次は自分の曲を聴いくれた人に同じことを思って欲しいなぁ、っていう気持ちがあります。僕の曲を聴いて、“歌ってみようかな”とか“これを投稿してみようかな”とか、“自分もボカロPになろうかな”とか思ったら、すぐ挑戦して欲しいです。まずは環境を言い訳にしないで、自分が作りたいものを自分がやる、叶えられるスキルを身につけて、自分の感覚や耳の良さを磨いて欲しいです。それらがアップデートされて行った時に、必ずGenelecは選択肢になると思います」
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