Built to Trust | 30年の時を経て生まれ変わった“1035”
大瀧 「このスタジオに1035が導入されたのは、およそ30年前の1991年だったと聞いています。もう随分前のことになるので当時のことを知る人間はいないのですが、コンセプトは、“東洋一のMAスタジオを作る“ということだったと聞いています」
こう語るのは、株式会社ブレーンのスタジオ事業部 MAの大瀧智之氏です。この第1MA室を作るにあたっては営業部が中心となって進められたそうで、「良いスピーカーでお客様を惹きつけたいとか、そういう思いもあったと思います」と大瀧氏は当時の背景について話します。
今回、1235へとアップグレードするにあたっては、その過程で様々なディスカッションが行われたそうです。
大瀧 「きっかけの一つとして、1035は随分長く使っていたこともあり、メンテナンスが必要な箇所も出てきていました。それと並行するように、この部屋のシステムを改修するという話が持ち上がったんです。そこで将来のことも考えながら、この第1MA室のスピーカーをどうするか、ということになったんです」
スピーカーの今後を考えるにあたっては、当然コストについても議題に上がったと取締役を務める髙村光秀氏は振り返ります。
髙村 「私はコストも考える人間なので、実はこれを機にサイズダウンするかどうするか、と考えていたところもありました。ただ、一度壁に埋め込まれた1035を外してみたら、土台が予想以上にしっかりと作られていて……こんなしっかりとした土台があるのなら、それをそのまま使うべきと考えたんです」
そしてもう一点、高村氏にとってラージ・モニターは制作に関わる者として、重要なポイントがあると続けます。
髙村 「私はイベント用の映像やプロジェクション・マッピングだとか、屋外のイベントで鳴らす案件も担当しています。こうした案件では、ニアフィールドだけでは分からない現場で感じるような臨場感、音圧を感じながら作業することが本当に大事なことなんです。“これが現場でどう聴こえるんだ”ということを一緒に確認して、演出家と一体になって進めることが大切なので、その意味でもラージ・モニターが必要だという結論に至りました」
こうしたディスカッションの過程で魅力を感じたのが、1035のエンクロージャーをそのままに、ユニットやアンプを入れ替えることのできる1235Aへのレトロフィット・アップグレードだったと振り返ります。
これまでのリファレンスを大事にしながら、次の5年、10年へと進む。価値のある導入になったと思います。
大瀧 「この部屋に入れるスピーカーなので、当然金額的にも負担は大きくなるなと思っていました。ただ、レトロフィット・アップグレードであれば、例えばサイズダウンを選択した場合と比べても変わらないコスト感で実現できるということが分かったんです。長年使ってきて信頼もあった1035を文字通りアップグレードする形で、最新の技術が手に入ることも非常に魅力的でしたね」
レトロフィット・アップグレードは、1035のエンクロージャーは活かしたまま、最新のユニットと省電力でありながらさらなる駆動力を実現したクラスDアンプの導入、そして強力なキャリブレーション機能を始め、優れたモニターコントローラーとしても活用できるGLM(Genelec Loudspeaker Manager)ソフトウェアへの対応を実現するサステナブルなアップグレード・プログラムです。
大瀧 「入れ替えた際は、まずGLMソフトウェアは使用せずに素の状態で鳴らしてみたんです。その音を聴いて思ったのは、当たり前なのかもしれませんが1035と似ているな、ということでした。私達にとってリファレンスの音が変わってしまうことは大きな問題ですので、この点は非常に印象に残っています。もちろん、キャリブレーションを行うことで特性は良くなるのですが、GLMではキャリブレーション後に自分で微調整することもできます。つまり、特性として優れた部分と自分が慣れている音とのバランスを追い込むこともできるんです。
髙村 「それと、この第1MA室のような広い部屋でお客様が気にされるのは、ミキサーの席では気持ち良く鳴っていても、後方に座ると物足りないと感じられることなんです。GLMはミキサー席に加えてクライアント席も測定して保存し、それを簡単に切り替えることができる。こうした機能はお客様と同じ音を共有するという意味でも大事なことなので、必ずマストになってくると思います。
リファレンスとしてのサウンド、コスト、最先端の技術、そしてサステナビリティ。レトロフィット・アップグレードは、これらの項目を高い次元で実現することを可能とします。今回、1035から次の世代へと歩みを始めた1235を前に、長年使い続けているGenelecのスタジオ・モニターへの想いをそれぞれ次のように話します。
髙村 「新人のころからGenelecのラージ・モニターでしかミキシングしてこなかったので、Genelecは特別ですよね。これがテレビではこう聴こえるんだ、とかそういうことも含めて、全て身体に染み込んでいるんです。この感覚をそのままに、レトロフィット・アップグレードで最新鋭のスピーカーとできることは本当に魅力的だと思います」
大瀧 「ブレーンにはこの部屋の他にも多くのGenelecの製品があるのですが、全く壊れない。これは信頼に繋がりますよね。これまでのリファレンスを大事にしながら、次の5年、10年へと進む。レトロフィット・アップグレードは、その意味でも本当に価値のある導入になったと思います」
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