ボンクリ・フェス2023で体感する坂本龍一のインスタレーション「PLANKTONの部屋」
7年目を迎えた今年のボンクリ・フェスで大きな話題を集めているプログラムのひとつが、「PLANKTONの部屋」です。誰でも楽しめる無料プログラムとして用意されているこの部屋が用意された背景には、故・坂本龍一氏が2016年5月に京都で開催された「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2016」の委嘱作品として発表されたインスタレーション「PLANKTON - 漂流する生命の起源」に端を発します。
藤倉「坂本龍一さんの昔の名作はもちろんだけれど、最近の作品で、一番僕の家で再生率が高いのが、『PLANKTON』のアルバム。電子音楽の音作り、世界観は、最高峰。ずっと何回も、このアルバムを聴いていました。そしてどうにか、この作品を展示する部屋をボンクリでできないかな、と坂本さんにメールしてみました。でもそこで僕は初めて知ったのですが、この作品は映像作品とのコラボで、音楽はインスタレーション作品の一部だ、と。そこで、僕は(PLANKTONを)「音楽作品」として気に入っていたので、ボンクリではぜひ音楽に絞ってやりたい、とお願いしました。坂本さんは、またまた即答で快く承諾してくださいました」
この時、坂本氏から出された条件は「入場料は取らない。多くの人に気軽に楽しんでもらいたいから」だけだったと話します。それから坂本氏が亡くなる4日前まで、藤倉氏はこのPLANKTONの部屋についてのやり取りをしていたそうです。
そんな今回のボンクリ・フェスのなかでもとりわけ大きな意味を持つこのPLANKTONの部屋ですが、この部屋では8台の8320 スタジオ・モニターと、1台の7360 サブウーファーが使用されています。この環境でGenelecが採用された経緯を、会場となる東京芸術劇場のサウンド・ディレクターである石丸耕一氏は次のように話します。
石丸「藤倉さんからこのPLANKTONの部屋の相談を受けて、過去のインスタレーション作品の展示としてのこの曲の再生環境を調べたら、いわゆるPAスピーカーを使用していました。ただし、今回は藤倉さんが"音楽のみの展示をしたい"とご希望でしたので、できるだけ原音をそのままに再現できる環境を、と考えました。東京芸術劇場では、すでに数多くのGenelecのモニタースピーカーが実働しており、私も音響チームのメンバーも高い信頼を寄せております。ですので、"原音をそのままに、出来るだけ良い音環境を"と考えた時に、真っ先にGenelecのスピーカーを想定したのは当然の流れでした」
オーディオ・インスタレーションとして再生されるPLANKTONは、正面という概念があるわけではなく、ただただ音に包み込まれるような世界が楽しめます。それはまるで、海の中を漂うプランクトンになったような感覚で、まさに広い海を漂流するような体験です。
藤倉「いつものことながら、坂本さんに一つをお頼みしたら、バアァっと一気に可能性が広がり、思っていたより何十倍も良い形に持っていくことになる、坂本龍一さんマジックです」
石丸「Genelecのおかげで坂本龍一さんと藤倉大さんの友情のこの部屋が、そして坂本龍一さんの生前最後の藤倉さんとのこのプロジェクトが実現できました」
ボンクリ・フェスは、2023年7月7日(金)〜8日(土)の2日間の開催です。
ボンクリ・フェス("Born Creative" Festival)2023
会期 : 2023年7月7日(金)14:00〜21:00、7月8日(土)11:00〜19:00
会場:東京芸術劇場
東京都豊島区西池袋1丁目8-1
※「PLANKTONの部屋」は、リハーサルルームL(B2F)での開催です。
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